士別駅(士別市)
中井洋服店
駅前に降り立つと、右手にレンガ造りの倉庫が並んでいるのが見える。農作物が今でもたくさん積まれることがあるのかと思いながら散策して行くと、町の角に北海道らしい佇まいの
建物を見つけた。木の枠にはめられたガラスに「中井洋服店」と書かれてある。
通りから窓越しに見えた古いミシンに惹かれるように、ガラガラとガラス戸を引くと、笑顔でおばあちゃんが出て来た。中井シゲさん。ここで五十年、主に紳士服の仕立てをやってきた。既製のスーツなどあまり無かった時代で、士別には十数軒の洋服店があった。丁稚奉公時代に知り合ったご主人と、独立し店を構えたのは昭和三十一年のことだった。
開店当時のままの店内というか作業場。反り返っていて艶のある木の床がどこか温かい。盤板と呼ばれる作業台は、義理のお兄さんが用意してくれたものだという。当初十センチもあった厚いカツラで出来た台は、生地の合わせのために千枚通しで穴がたくさん空くと削られ、今では八センチの厚さになっている。採寸して、生地を選んでもらい、仮縫いし、仕立て上げるまで、二人手作業で行った。寝る間を惜しんで働いた。定休日など縁のない生活だったが、ご主人の俊光さんは、時間を見つけ、写真を撮るのが唯一の息抜きだった。シゲさんは自分のことを「仕事以外何もできない人」という。何より「仕事が張り合い合って楽しい」と話す。
十年前にご主人を亡くしてからは、細々と洋服のリフォームや洋裁をこなす。「針仕事を続けているから私はボケないよ」と笑う。その指は太くてたくましい。
写真は嫌だよと言われながらも話すこと一時間。撮らせてくれたこの写真は、許されたという思いがした。



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士別駅は宗谷本線にある。あたりは農業地帯。ビート(砂糖大根)の製糖工場があり、美瑛あたりのビートもここに集められ、甜菜糖になる。

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